鋼材技術コラム
黒皮(ミルスケール)とは?黒皮の除去方法をご紹介!
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黒皮とは?
黒皮とは、熱間圧延加工で作られた鉄鋼材料の酸化皮膜を指します。別名、ミルスケール、酸化スケールなどとも呼ばれています。また、一般的に、黒皮が付いた鉄鋼材料は「黒皮材」と呼ばれています。この黒皮は、圧延~冷却の際に高温の素材表面が大気中の酸素と結合することにより形成されます。
黒皮の特徴
黒皮があることにより、鋼材表面と空気の接触を防ぐため、黒皮形成後は錆びが発生しづらくなります。しかし、防錆目的で形成されたわけではありませんので、保管する環境によっては錆びが発生する場合があります。
また、鋼材と黒皮の密着強度は乏しく、表面にはピンホールや凹凸があることから黒皮の付着した状態での塗装は剥離の原因となることがあります。特に、形鋼類は密着強度が乏しいため、プレス加工や曲げ加工で力が加わった時にパラパラと剥がれる事があり、寸法に狂いが発生する可能性があるので注意が必要です。
黒皮の色に違いがでるのはなぜ?
実は、製鉄メーカーやサイズによって表面が黒色や青色、赤色の鋼材があります。この違いは各メーカの圧延温度や冷却速度の違いによって発生します。一般的に圧延加工は800℃~1200℃になりますが、この圧延温度が900℃以下の場合に鋼材表面のミルスケールが赤色になることがあります。圧延温度が低い=酸化するスピードが早いことから、圧延加工中に生成されたスケールが粉状になり、冷却中に酸化が進み赤色のミルスケールが生成される為です。黒色のミルスケールは高温で圧延され、冷却も高い温度からゆっくり冷やされる為ミルスケールは黒色となります。
コイル材は圧延後、円状に巻かれますが熱を保ったまま徐々に冷却されるので酸化スケールは黒く、密着度の高い酸化スケールが形成されます。900℃以上で圧延された形鋼類は圧延後、長尺の状態で冷却床にて冷やされますがコイル材ほど保温されず冷やされるので、黒色の酸化スケールを形成しますが、比較的密着度の低い酸化スケールとなります。
黒皮の除去方法
いかがでしょうか。黒皮の基礎知識についてお分かりいただけましたでしょうか。それでは、本題である、黒皮の除去方法についてご紹介します。
1.ショットブラスト
ショットブラストとは、鋼材に細かい鉄球や砂を衝突させて黒皮を除去する方法です。鉄球を衝突させると表面は凸凹になるため、塗装の密着性が良くなり塗装を長持ちさせる事ができます。また、製缶品をショットブラストラインに投入し溶接後のスパッタ除去を行う場合もあります。
注意点としてはショットブラスト加工後、鋼材の素地が大気中に触れるため、とても錆びやすくなります。一般的には、ショットブラスト+塗装や防錆油の塗布がセットとなります。また、表面に凸凹になるため、塗装後もザラザラした手触りになります。
2.酸洗い
酸洗いとは、塩酸や硫酸などの酸溶液を用いて鋼材表面の油やミルスケール、錆びなどを除去する方法です。工程は、❶脱脂洗浄→❷水洗い→❸酸洗処理→❹水洗い→❺中和→➏水洗い❼乾燥となります。酸洗いもショットブラスト同様、鋼材の素地が大気中に触れるため、速やかに防錆処理を行う必要があります。酸洗い後は表面に凸凹が生じないためツルツルした手触りになります。
ちなみに、一般的に酸洗いはメッキ加工の前処理として加工されますが、酸洗い仕上げとしてご要望頂ければ、当社にて対応することが可能です。
3.切削加工
切削加工とは、フライス加工、機械加工とも呼ばれ、切削という文字の通り材料を切ったり削ったりして不要な部分を除去し、用途にあった形状や理想のサイズに加工することです。
この切削加工を用いることで、黒皮の除去も可能な上に、最終製品の形状に近づけることができます。例えば平面加工や穴加工、段差加工など複雑な形状に加工でき、寸法精度もドリルによっては高精度な公差に仕上げる事も可能です。
4.磨棒鋼の代用
磨棒鋼とは、冷間圧延により製造された鋼材であり、ミガキ材とも呼ばれます。磨棒鋼は、冷間圧延にて製造さえるため、黒皮発生の恐れはなく、表面が綺麗な素材です。そのため、そもそも黒皮材の使用を避けたい場合、磨棒鋼を使用することが適切といえます。
また、この磨棒鋼は、寸法精度が非常に高いため、シャフト材などで使用されることが多いです。(※下表は参考です。)
鋼種 | 板厚公差(6mm) | 幅公差(50mm) |
黒皮材 JIS B級 | ±0.4mm | ±1.0mm |
磨棒鋼 h13級 | +0、-0.22 | +0、-0.22 |
しかしながら、磨き棒鋼は圧延された材料を冷間にて引き抜くため素材コストは高くなります。また、上述の通り、磨棒鋼は、冷間圧延により加工されるため、金属に力を加えて起こる加工硬化や、材料の内部に力が残っている残留応力の影響などを非常に受けやすいです。曲げ加工等によりクラックが入る恐れもあるため注意が必要です。
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いかがでしたでしょうか。今回は、黒皮の除去方法についてご紹介しました。圧延材では黒皮の処理方法は必ずついて回ります。最終仕様用途やコストにより黒皮の処理方法が変わってきますが、丹羽鋼業にご相談いただければ、最適な処理方法をさせて頂きますので、お気軽にご相談ください。