鋼材技術コラム
SPHCとSS400の違いは?JIS規格や化学成分、曲げ性能について比較解説します。
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SS400は鋼帯、形鋼、平鋼、棒鋼などがあり鋼材の流通量としては非常に多い規格ですが、SPHCは鋼板のみの規格となるため今回のコラムでは鋼板のSPHCとSS400の違いについて解説していきます。
JIS規格での比較
SS400
SS400とは、Steel Structure 400の略。【JIS G 3101 一般構造用圧延鋼材】【400】は引張強さ(N/mm2)の最小保証値で、SS400の場合は「引張強さ400~510N/mm2」の範囲であることを示しています。
化学成分においての規定は緩く、JISでは硫黄・リンのみの規制となっております。
しかし、機械的性質を満たすためにC(炭素)とMn(マンガン)は添加されており、炭素量は0.1~0.2%が多くなっています。
特徴としては引張り強さが規定されている素材となります。SS400の用途として土木建築部材・船舶部品・自動車部品などが挙げられます。
SS400には板厚の規定がありません。
※1994年のJIS改正前には、SS41と呼ばれていました。現在でも古い図面には記載されていますね!
SPHC
SPHCとは、Steel Plate Hot Commercialの略です。【JIS G 3131 熱間圧延軟鋼板及び鋼帯】
SPHCは、引張強さが270N/mm2以上の規定であるため、SS400と比べ柔らかい素材で曲げ加工性に優れていると言えます。
【HOT】とある通り、熱間圧延された材料であり、そのSPHCを使いSPCC(冷延鋼板)やSPHC-P(酸洗鋼板)が製造されます。SPHCの用途として、自動車・電気機器・機械部品などが挙げられます。
SPHCの板厚は、1.2~14㎜が適用厚さとしてJISに規定されています。
化学成分の比較表
種類の記号 | C(炭素) | Mn(マンガン) | P(リン) | S(硫黄) |
---|---|---|---|---|
SPHC | 0.12以下 | 0.6以下 | 0.045以下 | 0.035以下 |
SS400 | – | – | 0.05以下 | 0.05以下 |
※必要に応じて、この表以外の合金元素を添加してもよい。
SPHCとSS400の大きな違いは引張り強さになります。
SS400の方が数値が高いため、強度が求められる箇所では、SPHCは不向きです。しかし、SPHCの方が曲げ加工性に優れるため、強度が求められない箇所では多く使用されます。
曲げ性能 比較表
曲げ角度 | 内側半径 | |
---|---|---|
SS400 | 180° | 厚さの1.5倍 |
SPHC(3.2mm未満) | 180° | 密着 |
SPHC(3.2mm以上) | 180° | 厚さの0.5倍 |
上記条件で曲げ加工を実施し試験片の外側に亀裂が発生しないこと。と規定されています。
SPHC・SS400 特徴まとめ
SPHC | SS400 | |
---|---|---|
名称 | 熱間圧延軟鋼板 | 一般構造用圧延鋼板 |
引張強さ | 270N/mm2以上 | 400~510N/mm2 |
JIS規格 | JIS G 3131 | JIS G 3101 |
特徴 | SS400に比べ強度は落ちる 一般市中材は安価 曲げ加工性に優れる 鋼板に限った規格 | 強度に優れる 加工性、強度もあり安価 極端な曲げには弱い 品種、サイズが幅広い |
さいごに(一口メモ)
SS400の鋼種を表す400という数字は引張り強さにより定義されますが、実際の使用時に重要なのは変形に対する耐性を表す降伏点(耐力)です。SS400に降伏点の規定がありますが、SPHCには無いことからSS400には強度がありSPHCは曲げ性に優れていると言えます。
冒頭にご紹介した通り、SS400、SPHCともに熱間圧延した材料となるので表面には黒皮(ミルスケール)が付いています。
丹羽鋼業の鋼材技術コラムでは黒皮と黒皮の除去方法の紹介もしていますので是非ご参照ください。
